ミニコラム


全然、馬の骨じゃない人




元日

姉の彼氏が家に来た。

私にとってはファーストインパクトである。

母はかき集めたプレモルの限定ラベルを惜しげも無く提供する意思を表明し。

父は朝に家族で突っついた三段のお重を二段に詰め直すことで新品のように見せる偽装工作に余念がなかった。

家族一同歓迎ムードだったので僕だけ審査するような目でいこうと決めていた。

昼過ぎ現れたのはタレ目で温和そうな人だった。

落ち着いたセーターで切り餅を片手にやってきた。

嫌いな食べ物は無いと言い切り。

ランニングやトライアスロンなどを嗜んでいるそうだ。

好きな芸人はサンドイッチマン。

小さな小さなクッキーを割って姉と二人で食べていた。

いい人そうである。

外に目をやると私が磨いた窓ガラスは拭った跡が目立っていた。

虚構が服を着て話しているような人だな、と思った。

いい人に見える人は、本当はヤバい人なのでは?

などと疑ってしまうのは、私がいい人そうに見える初対面の人のアラを探してしまう嫌な癖の持ち主であるからだ。

バイトの初日に
店長があまりに綺麗な目をしていたので
特殊性癖かどうか探りを入れたところ
「普通のセックスをしてます!」
と断言されてしまったことがある。

いつの間にか彼の地元の話の二巡目に差し掛かっていた。

私は少し飽きて彼の表情ばかり見ていると。母に祖母が一人で拗ねているからと母に言われ

私は席を外し居間で祖母と話した。

四時間ほど経っただろうか、姉に見送られ彼は帰っていった。

次の日の朝、彼の持ってきた切り餅を姉と一緒に食べた。

外側までふわりとしていて、今まで食った餅のなかで一番うまかった。

私は「一個でいい」といった自分の発言を一瞬で翻し、合計四個の餅を食った。

いい人に見える人は、大抵いい人である。というふうに、自分の意見も軽く翻しつつ

全体的に、まるっとうまくいけばいいなと、無責任ながら思ったりする。


並木雅浩




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