ミニコラム


カニなんか最悪



私は食べ方が汚い。こぼすしおとす。肉のスジが噛みきれなかったら手でどうにかするし、レタスを箸で口に入るサイズにしてから食べたりなんかしない。掃除機でビニール袋吸ったみたいに私はレタスを食べる。だってその方が美味しいから。

この間久しぶりに高校の友達二人と三人でご飯を食べたとき、初めて食べ方のことを言われた。一人が私の食べ方を汚いと言うと、もう一人は「ちょっとそんなこというのやめなよ」的な顔をしていた。ずっと思っていたのだろう。高校時代私たちは、スッピンをブスといい、太ったらデブといい、振られればダメ女だと、誰も望んでないイジりあいを会話の潤滑油として多用していた。なのに、食べ方が汚いことは言われたことがなかった。別に言われてもよかったのに、気を使われて、それが勝手に相手の中で肥大化して、勝手に私の食べ方は腫れ物になっていた。その日撮った写真はまだ送ってない。

食べ方が汚いってそんなにだめだろうか。別に良くないかと思ってしまう。口の周りについててもおしぼりでちゃんと拭くし、人に迷惑はかけてない。月に一回ご飯に行く友達はいるから、多分見てて気持ち悪くなるほどでもないはず。ポップコーンを食べた手でケータイはいじらない。汚いから。でもそれは綺麗な手の時に困るからって理由があるし、第一私はそんなにポップコーンは食べない。特にむしゃくしゃもしてないし眠れないわけでもないんだけど、とりあえずTwitterにやらなきゃいけないことが多いという旨の全員言える愚痴を垂れ流す。そうすると大体昔好意を持たれていたことは筒抜けの、大したことない、でも自分はこのくらいなんだろうという男から連絡がくるようになっている。電気ガス水道昔好意を持たれていた男。この四つのライフラインで私は生きている。

 ご飯に誘われた。呑みならいいよと言った。ホテルのない駅での集合を提案されて、なんにせよめんどくさいなと思ってしまう。こういう男は改札でダラダラしているカップルを笑うが、あっちの方が好意に正直な分まだ男らしいと思う。待ち合わせ場所にいた男は全然変わってなかった。悪い意味で。ここで期待していたことに毎回気づく。

向こうはハイボールだったので私はゆずみつサワーにする。ビールを女が頼むと笑う男は靴下がださい。大体赤黒ボーダーのくるぶし。飲み物が来て乾杯する。グラスを持っていない手で、おしぼりで口元をおさえてる自分がいた。

私は食べ方が汚い。気を許してる相手とのご飯は美味しい。

井田響花



link: